人間が生活する基盤は家庭です。こどもの養育される場も家庭です。さまざまな事情で、家族と暮らせなくなったこども達、不幸にも保護された幸薄いこども達にも、実の家庭に替わる生活の場としての家庭が必要です。
社会的養育の疑似家庭として、エス・オー・エスこどもの村では、出来るだけ施設色を排した小集団の小舎制による家庭舎及び地域社会の中でのグループホームで、暖かい福祉の心と専門技術を兼備したお兄さん、お姉さんによって心豊かに育成されるよう日々の生活が営まれています。
1、こどもの村の理念
(1)心豊かな家庭生活
一般家庭と同じようにあらゆる生活環境を備えた家庭舎で、保護されたこども達5~6名が兄弟姉妹となって一緒に住む家庭が作られます。こども達が負った心の傷が一日でも早く癒され、愛される喜びを得られるように、お兄さん、お姉さんの温かい手作りの料理を味わいながら、適切な指導のもとに家庭の躾を身につけさせます。
そしてこども達の自主性を伸ばし学習の大切さ、生きる優しさと人生を切り開いていく心を涵養し、体得し、自立への道を模索させます。
(2)地域社会との交流
家庭舎・グループホーム養育が如何に充実していても地域との交流が無ければ地域社会から孤立してしまいます。
グループホームの実践のように、こども達が地域の家庭、学校との緊密な連携のもとに良い友達関係を構築していくように、地域の中の施設として地域住民と協調し、連帯しあいながら地域行事に積極的に参加します。
同時に、社会資源として施設のもてる設備、能力、人力を共有することによって地域社会との交流を深め、こども達と共に職員も地域に根ざした社会生活の基礎を培ってゆきます。
2、こども達の育成指針
「心豊かな家庭生活」「地域社会との交流」の理念の上に、やがて社会人となるために疑似家庭生活を体験させ、自立できる精神を養います。
○楽しい食生活に整理整頓された室内、端正な服装を心がけながら規律ある日常生活を実現します。
○学力の向上と体力の増進を図り、それらの力を基盤に日常生活に応用する力を養います。
○自分の立場を見つめ、社会の恩寵に感謝し、自分ができることを積極的に実践していくように指導します。
3、具体的な職員としての支援のあり方ついての研修
多岐にわたる困難な問題を抱え入所してくる児童へ、わかりやすく見通しのつく生活ができるように生活の構造化を図り、職員個別の養育感に頼らず、施設がチームとして効果的で一貫した支援を行う必要があると考えます。
各家庭舎において家庭的な支援を目指す一助として、支援の柱を「ボーイズタウン・コモンセンスペアレンティング」で職員がこども達へ具体的なアプローチを図り、「セカンドステップ」でこども達自身が具体的に生活向上を目指せるスキルとして、2つのプログラムを実践しています。加えて「生と性」への支援、及びネット社会への危機管理を支援しています。
○ボーイズタウン・コモンセンスペアレンティング(以下CSP)
アメリカの児童施設BoysTownで開発されたプログラムで具体的なしつけの方法として6つの教育法を基に実践します。「悪い子どもはいません ただ悪い環境と悪い学びがあっただけ」という哲学の下、実践し成果を挙げているプログラムです。
当施設では、「心豊かな家庭生活」の理念に向けて、こどもに応じた必要な社会スキルを練習することで、他者から認められ、自己肯定感を持てる援助を目指します。
その結果、問題行動、生活の荒れに繋がることを軽減し、落ち着いた規律ある生活の中で、生活スキルと学習面の向上に綱がる生活を目指すことができるのです。
CSP研鑽の機会を持ち、職員集団の共通言語と共通認識をもって児童対応ができるように継続をしています。
○セカンドステップ
アメリカのNPO法人CFCが開発し、NPO日本こどものための委員会が提供するプログラムであり、暴力以外で問題解決することを目的としています。相互の理解・問題解決・怒りの扱いの3つの軸からなり、具体的な場面で相手の気持ちを推し測り、どのような行動が適切なのかをグループワークで練習していくプログラムです。
当施設では、他者を意識した対人関係を身につけるため、年齢に応じて定期的にグループワークを行います。様々な意見を出し合える環境設定が約束され、他者の意見を批判しない、批判されない安全安心な場を念頭に実施しています。
○「生と性」への支援
施設に入所してくるこどもたちは、自分の「生」に対して否定的に捉えていることが多くあります。
入所中もそうですが、施設を出た後も「性」の問題を抱えるケースがあります。
施設内にいるときから「性」について相談が出来る環境を作り、継続して支援が出来るよう、日常生活の中で「性」についてアプローチしています。
又、全国児童養護施設サークルに所属し、施設内での「生と性」の問題に対応できるよ
う学びを深めています。
全国児童養護施設サークルHP
○ネット社会への危機管理
スマホが当たり前の時代になり、こどもたちが容易にネットへ接続できるようになりました。ネットの便利な部分や楽しさ、危険を理解した上で使えるように支援を検討しています。
便利な道具ほど使い方を間違えると危険度が増します。スマホを持つ前に、スマホの使い方やルールを一緒に考え対応しています。